井上道義:鏡の眼
ブルックナー:交響曲第5番 変ロ長調
大阪フィルハーモニー交響楽団
チケット: A席5,000円 B席4,000円 C席3,000円 D席2,000円
演奏会お問い合わせ先: 兵庫県立芸術文化センターチケットオフィス Tel:0798-68-0255
人生、どう転ぶかわからない。この僕がブルックナーのシリーズを
大フィルとやりN響とやる?(以前ドレスデンフィルと少しやったが)
50年前桐朋の学生のころに、朋友尾高忠明が
ブルックナーに心酔し、教師の末吉先生が「あんなもんは、後ろ向きのクラシック音楽」
みたいな発言をしたのにカンカンになって怒っていたことを思い出す。
どこか冷めたところがある俺は、横目でそれを見ながら
「僕はマーラーなら親近感を持つな、あの自分を取り巻く現実社会との
違和感を音楽に表現し、自分を立て直そうとする姿勢には。
東洋人としても異邦人的共感を重ねて持つが、ブルックナーねえ・・・
僕はカトリック信者であるから(とはいえ母親に影響されての子供のそれで
しかなかったが)信仰は、信仰、音楽は音楽だ!演奏に「神がかる」というのも
何だか偽の代替物みたいだし、おかしな話だ」とか言っていたのを思い出す。
全く間違った青二才の論理だった。
音楽や舞台芸術はすべてバーチャルな疑似創造物であって、
あらゆる事物、感情を描くことに芸術の存在意味と自由があると知ったのはずいぶん後だった。
25歳のころ心酔したまだ50代後半だったチェリビダケがシュツットガルトでブルックナーを
多く振っていたためいつの間にか興味を覚え、ある時振ってみたら
愛妻(その頃は文字通り愛妻!)に
「あなたブルックナはーマーラーより何だか体から自然に出てくる感じで好いわよ」
と言われて気を良くし、ハマり始めた。単純!ショスタコーヴィッチが僕のすべてになったのはずっと後のこと。
しかしマーラーを振るときの井上とブルックナーを振るときの井上は、完全に別人、
そして人格も生活も変わる。これはすべての役者、演出家、映画監督にも言えるだろう。
どれがほんとの自分かって、どちらも自分の部分でどちらも自分のすべてではない。
ただ、今70になってマーラーの1,2,3、辺りを泣き叫び、大向うを唸らせ
阿鼻叫喚をも振り狂う事は出来ないかもしれない...とは思う・・体力の問題ではなく。
そういう意味では今回,前座に自作の16年前の作品「鏡の眼」をやらせてもらったが、
兵庫のお客さん!有難くも何回も呼び戻してくれて拍手、拍手。
「拍手」は仕事の後のシャワーの様にしか思ってはいけない!そのまんま嬉しがっては
いけない!だって何を対象への拍手かわからないのだから!と心に決めているが、
自作となると素直に嬉しかった。
ブルックナーの演奏は、大フィルの強いところが出た。流石だった。
しかし同時に弱いところもあり惜しかった。この次のショスタコーヴィッチ連作は
もっと上を狙いたい。
指揮者を頼りにしていないふりをするが、実はどうも受動的に頼るところが見える。
休憩時はもちろん休憩して良いのだが、問題があった場所をそこでこそ解決
しようとする奏者が全員であってほしい。もっとも・・・・
それを求めるのは、井上がこのところ発言している大フィル=ラテン気質の長所の
影を考えれば求めてはいけないのかも!
誰もすべて長所ばかりを持つことはかなわない。
愛とは短所も愛すことかもしれない。それは「短所」を持つこちら側の主観的な
見え方に過ぎないのだから。
テレビでクラシック、それもオーケストラ音楽がそのまま伝わるかというと・・・・それは無理と言い切る。
【NHK/Eテレ】クラシック音楽館 / N響 第1849回 定期公演
一杯のお客さんに囲まれた昨日は、本当の意味で正直に、大フィルの持つものすべてが表現された音楽会だった。
大阪フィル《創立70周年記念》第50回東京定期演奏会
今日はさらにいい演奏になる と思うのが人間の原点。でも良い演奏という基準はなんだ?
N響 第1849回 定期公演 Cプログラム
一杯のお客さんに囲まれた昨日は、本当の意味で正直に、大フィルの持つものすべてが表現された音楽会だった。
大阪フィル《創立70周年記念》第50回東京定期演奏会
武満さんは、作曲家。死んだ後も続く強く存在!そう再確認した一日だった。
新日本フィル #568 ジェイド≪サントリーホール・シリーズ≫
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