OEK 第33回東京定期公演

2017.03.22
東京オペラシティ コンサートホール
午後 7時開演(午後 6時15分開場)

バルトーク:ヴィオラ協奏曲/ダニール・グリシン[Va]
モーツァルト:レクイエム ニ短調 K626(バイヤー版)

半田美和子[Sop]
福原寿美枝[Alt]
笛田博昭[Ten]
ジョン・ハオ[Bas]
オーケストラ・アンサンブル金沢合唱団
オーケストラ・アンサンブル金沢

チケット: S¥6,000- A¥5,000- B¥3,000-
演奏会お問い合わせ先: 石川県立音楽堂チケットボックス 076-232-8632

【道義より】

勿論、この日のメインはモーツアウトのレクイエムという特別の名曲(難曲でもある)であったのだが、
ダニール、グリシンの弾くバルトークこそが白眉で、レクイエムと同じ遺作(こちらの方が、
実は編曲者の手が強く入っている...実際はどんな楽譜として残されていたかは世の中に明らかにされていない)
の今マーケットに出ている録音物と比べて、間違いなく一枚上を行くバルトークらしさが表出された名演だった
とお伝えしたい。
バルトークはたくさんのトランスシルバニア地方のフォークミュージックを収集し彼の言葉として咀嚼して
音楽の中に表現している。だから、エッセンスは民衆の音楽。ダンスのための5拍子などの不規則リズム、
言葉をのせるための多少変わった音型など、どこかに人間の内面を表出する悦びが隠れている。
どうも、偉そうに難しそうに戦いを挑むような演奏ばかりが多いのが残念な作曲家だ。特にヴィオラのコンチェルトは!
彼、グリシンの演奏は、常にボヘミアン的な自由な(伴奏をつけるのが難しい!が)目指し若々しいパワーに溢れ、
ちょっと誤れば怪我をしそうな危うさも秘めて、スリリングでありながら鳥のように滑らかに弧を描く演奏だった。
この作品の古典として録音物を残してもいいほどだった。

他方、モーツアルトの遺作は多少手垢にまみれていて、いくつかの編曲が出版されているので、どれを使うかという事が
批評の対象にされる...ブルックナーのように...のが残念な事ではある。
4人のソリストは一人一人が本当の意味でクラシカルに音楽的であることが条件でもあり、美声であることも条件であり
4声のバランスを取る事も条件である。合唱は同じように高い完成度が求められる。
今も自分の声が自由に使えない道義は、とっても悔しいが合唱指揮者としては落第...と思う。
そんな中、辻博之君は、金沢の合唱団を良くまとめてくれた。オペラシティーホールでの思い出も残ると思う。
ただしOEKの繊細さと、バランスのとれたモーツアルトの正攻法こそがレクイエムの中心にあったことは
隠しようもない事。今アンサンブルは一つのピークであり、これを保つことはこれから厳しい未来が待って居よう。
とは言え、批判的見方は別として、今回、芯からモーツアルト的なレクイエム、
神の前にいつか死を甘んじて受ける、今、生きている人のため、天才の遺言が、
この日のお客様に届いたような気はしている。音楽堂というよりの教会のような、武満メモリアル、に感謝!!


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