札幌交響楽団 第661回定期演奏会

2024.05.26
札幌コンサートホール Kitara 大ホール
午後 1時開演

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武満徹:地平線のドーリア―17人の弦楽器奏者のための
武満徹:アステリズム―ピアノとオーケストラのための/北村朋幹[Pf]
クセナキス:ノモス・ガンマ
ラヴェル:ボレロ

札幌交響楽団

チケット: (SS)¥7,000 (S)¥6,000 (A)¥5,000 (B)¥4,500 (C)¥3,500  U25割(B,C)1,500円
演奏会お問い合わせ先: 札幌交響楽団 011-520-1771

【道義より】

一日目は5時から、2日目は1時からのコンサート。今回色んな不思議な良い偶然が
演奏全体にプラスに働いた。以下長文になった。
①まず結果的に札響で60数回も指揮したコンサートの後半は、多くが12月15日周辺の
「キタラのクリスマス」という、必然的に色物?と言われそうなコンサートが多かったの
で、例えばダンスを加えたり、照明を加えたりの積み重ねがあった。12月は第九に忙殺
される日本のクラシックコンサート環境=これは明らかに僕がNHK教育テレビで、80年~
90年に「第九を歌おう」という番組をシリーズで作り、好評だったので再々放送まで
あったりしたのが原因の一つだからブーたれてはいけないが行き過ぎた=ので、雪が
降り始める美しい時期のキタラホールで毎年創意工夫を重ねられたのは僕にとっても、
きっと札響にとってもオアシスだった。
結果、僕にとって記憶の後半=近記憶はキタラという環境の中での札響だったから
自ずと、ワインヤード型の祝祭的な音楽が似合うアコースティックの作品を選んできた。
そう・・だから、ベートーベン、ショスタコーヴィッチ、ピアノコンチェルト等・・・
(今回の武満、アステリズムはピアノに蓋を使うなという指定があるから文句な
くピタリ!)・・・は避けてきた。    東京ならサントリーホールも同じ。


②武満徹さんの札響愛は、彼の異常なまでの詳細な指定、スコアも美しくかっこよく見え、
演奏は、技術的に研ぎ澄まされてなければならない80~90年代の「現代音楽」の
大衆を相手にしない姿勢、明らかに世界中の作曲家達も「世界最先端を相手に」の姿勢
をあらわにしていた時代の、潔い態度の楽譜が、「そんなことヤラナイでもっと普通
に書いてよお」という開拓精神とは向かう方向が逆さのクラシック音楽界の「普通の」
演奏家たちにメンドクサがられた時、時間が大都会よりゆったりと進んでいた北海道、
札幌のオーケストラメンバーが、真面目に、実直に、武満さんの研ぎ澄まされた優しさ
に付き合ったためだ。人は大切にされることを嬉しく思う。今回北村朋幹君は武満徹を
愛するあまり「アステリズム」の録音を行った。素晴らしいタッチ。武満さんが
ピアニストになったように思えた。都会人は星空を見あげなくなってしまったが
アステリズムのクレッシェンドは・・・・人気がある。フフ。僕は徹さん自身の方が好き。

           横道にそれるが・・・

同じ北海道出身の伊福部昭には、この辺り、もっと一筋縄ではいかない問題があるようだ。
彼は若い頃、音更でアイヌの人たちが、何かというと踊り、歌うさまに感動し、独学で
土の匂いの中から日本の「共同農作業」を尊く感じるような平和な音楽を打ち立てた。
都会という存在を壊すゴジラ音楽は彼の若い時の、郷土愛の発露なんだろう。
そんな彼が普段から常に蝶ネクタイをしていた不思議!
しかし、人は人類の発展、とは街を造ること、建物を建てること、テリトリーを守ること、
と信じるようだ。物好きな人だけが、放牧酪農に憧れたり、自作農風な生き方で生きよう
とするいう常識が大勢だ。30年前、山本直純さんが「大きいことはイイことだ」と歌った。
今、小売店はどんどん消え去り、スーパーで全てが手に入り便利になり富士山を見るための
コンビニ?が世界中から人を呼び込んでしまった。

③クセナキスのノモスガンマ、αでもβでもなくγ!俺は癌魔とも付き合ったからこれが
誰よりもうまくなった...フフフフフフ。演奏するのも指揮する人も、緊張する曲だが、
究極のいい加減にも成り得る自由さが面白いともいえる。この曲とももうオサラバだが、
初めは20代だった僕はミラノスカラ座でこれを指揮した。カルラフラッチという美しい
バレリーナも居た。シルビアサルビニアーノというほれぼれする個性的なダンサーも。
確か同時にリゲティーのロンターノも振ってキリキリ舞いだった。リゲティーでは本番で
ちょこっと振り間違えたのをクラウディオアッバードにバレて、この人なんで判るんか
恐ろしいと思ったが・・・きっと彼はクセナキスは振れない、振らない、と思う。

あんなに世話になったクラウディオ!本当に良い人だったけれど、僕には彼の音楽が一度も
面白かったためしがなく(コンチェルトは別)その頃僕のマネージャーだった
アダフィンチおばあちゃんも「良い指揮者のオペラはつまらない」と言っていたのを
今思い出す。ふふふ、今年振る井上最後のオペラ、ラ・ボエーム・・・きっと上手くいく。

アンコールの特殊な土俗的セッティングでの「ボレロ」は繰り返しだ。これも恐ろしく
沢山振ってきた。振り納めだった。
永年やってくれたキタラの照明の岡田さんの力が大きかった。その彼とは僕がピエロ役で
指揮し、踊ったモーツアルトの「コロンビーナとアレッキーノ」以来の積み重ねの結果
だった。LOVE YOU.

最後に全裸になりたかったが5年程生き過ぎて凸凹皺皺。  やめておいた。


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