新日本フィル「トリフォニーホール・シリーズ」第659回定期演奏会

2024.11.16
すみだトリフォニーホール 大ホール
午後 2時開演(午後 1時15分開場)

道義、ファイナル
最後の「レニングラード」

ショスタコーヴィチ:交響曲第7番 ハ長調 op. 60 「レニングラード」

新日本フィルハーモニー交響楽団

チケット: S席 7,000円 A席 6,000円 B席 5,000円 C席 4,000円
演奏会お問い合わせ先: 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815

【道義より】

トリフォニーホールも1997年開館だからそろそろ30年になる。出来立ての頃、
小澤さんが「変な名前だな、とーりふお、とか言うの」と言っていたのを思い出す。
彼はトリフを好んだりするタイプでなかったし、僕は墨田区、川向うは戦争ですっかり
焼けた辺りだしクラシック音楽に来る人居るのか?と、山の手育ちの上目使いで見ていた
のを頃を思い、隔世の感を持つ。近々、建物に手を入れると聞いているが、コンサート
ホール内部は特にショスタコービッチやベートーベンなど適した素晴らしい響きだ。
駅から入り口に至る道、とホールの入り口をもうアイディアをもって広くして、余裕
ある感触にしていただけたらと強く思う。勿論あの日比谷公会堂を復活させ東京の中心
のコンサートホールとして使えるようにして欲しかったが、オリンピックのゴタゴタの
、とばっちりで、今あそこは僕の生きている間に改装がないのは心残りだ。


井上がNJPの監督だったのは実はあまり長くなく、5年間、今ここには詳しく書かないが、
練習する場所も貧しく、定期公演は上野文化会館の時代だった。サントリーもオペラ
シティーもオーチャードも、もちろん川崎のミューザもなかった時代で、音作りなんぞ
出来なかった。
短かった理由は今回の演奏にもわずかに残るメンバー達とラベルの「ボレロ」を演奏
した後、楽団団長に夜中に電話をして「やめる」と一言でやめてしまった。
演奏がボロボロだった。
僕が多分プレッシャーをかけ過ぎ、一人の小さなミスがみんなに伝播して・・・
語るも恐ろしいあの記憶。征爾さんとのぎくしゃくした関係もその原因だったが。

昨晩、ソヴィエト時代のボレロ風な1楽章、無知から起こる争い・・戦争、すなわち、
御国の事を思うあまり隣の国を敵としてしまう、「人の持つ弱さ、小さな間違い」が
横尾忠則さんの「分かれ道シリーズ?Y字路シリーズ?」のように少しずつ、平和と
いう日常を破壊し激しい分断を生む、戦争というものの悲劇を、35年たった「新しい
新日フィル」は余裕をもって表現した。幸い僕はいつもこのオケと良い関係であった。

2楽章は平和の中の日常の持つ、違和感のあるマーラー的な歌をソロ楽器が歌い、
時代の経過をコサックダンスのようなリズムと対比させ、両者をショスタコ自身は
西欧とロシアを自分の血肉として表し歴史を前進させようとした。

3楽章では宗教的教条主義と近い隣国フィンランドのシベリウスの音楽のような
清純な風が吹く自然の中での乗馬のような息吹あふれる情感と、チャイコフスキー
のような物語風な動きを弦楽器に託し地続きの自由な広い世界を描こうとした。

そして4楽章は現実の酷さから何とか未来への希望、すなわち大河ドラマのような
テーマを繰り返し繰り返し積み重ね「明日を信じよう」と、若い36歳のショスタ
コーヴィッチの希望に満ちたメッセージの音楽だ。

明日サントリーはどうなるだろう?
サントリーなのに一杯飲む暇がないコンサート!。お客さんは一杯だが。うふふ



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ショスタコーヴィチ交響曲全集 at 日比谷公会堂
「今はショスタコーヴィチは僕自身だ! 」と語る井上道義2007年に成し遂げた「ショスタコーヴィチ交響曲全曲演奏会at日比谷公会堂」。 日本人指揮者唯一の偉業となる一大プロジェクトをぜひお聴き下さい。

Schedule

降福からの道 欲張り指揮者のエッセイ集
「僕の人生、音楽だけではないが、正面から指揮をやってきたらこれほどの発見があったことに驚いている!」

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ショスタコーヴィチ交響曲全集 at 日比谷公会堂

「今はショスタコーヴィチは僕自身だ! 」と語る井上道義2007年に成し遂げた「ショスタコーヴィチ交響曲全曲演奏会at日比谷公会堂」。 日本人指揮者唯一の偉業となる一大プロジェクトをぜひお聴き下さい。

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ショスタコーヴィチ:交響曲 第7番 「レニングラード」

大阪フィルハーモニー交響楽団

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ショスタコーヴィチ:交響曲第11番「1905年」

大阪フィルハーモニー交響楽団

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チャイコフスキー:交響曲第4番
ショスタコーヴィチ:ロシアとキルギスの主題による序曲

大阪フィルハーモニー交響楽団