篠田さんを偲んで

2025.03.28

【道義より】

一昨日、調べ物をしていて2003年夏に出版され、編集者の急死によって一年余りでで廃刊になってしまった小学館スクウェア発行の「分」と言う不思議な名前が付いた季刊誌の第4冊目の中で、私と往復書簡をさせていただいたのを丁度読み直していたので驚きました。
(一冊目と2冊目はワレリーゲルギエフとの往復書簡、3冊目は続けるはずだった彼がロシア式に逃げたため私の文、4冊目はギドンクレーメルとの対談で、4冊目が篠田さんへの質問、5冊目が篠田さんからの答の文、6回目は川勝平太さんとの対談)

それから数年後、2007年の日比谷公会堂でのショスタコーヴィッチ交響曲連続演奏会で、話してくださった逸話が忘れられない。
それは若かった時、武満徹さんの曲を聴いた後、電車の中でまだ顔を見たことのなかった武満徹をあの音楽を作った男はこの人に違いないと直感して声をかけ、間違っていなかった時の感激のことだった。
きっと篠田さんは岩下志麻さんの中に隠されていた映画俳優としての才能もそのように「発掘」したのに違いないと思う。
何故なら後年、金沢の21世紀美術館でご家族らしい人たちの中に見つけた「篠田正浩監督」の少し後ろに、とても普通に見える女性が志麻さんの真の姿として存在していたからだ。
素直に、飾らず、防御もなく、目立とうともせず、「心中天の網島」や「極道の妻」ではなく。現実と虚構、日常と芸術の距離はこれで良いのだ。

時も人も場所も、そこに大事な真のマグマを...「見るのだ、見えるのだ」・・・見る人が見れば。篠田さんからは何か輝く嘘偽りのない情熱を感じてばかりだった。

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ショスタコーヴィチ交響曲全集 at 日比谷公会堂
「今はショスタコーヴィチは僕自身だ! 」と語る井上道義2007年に成し遂げた「ショスタコーヴィチ交響曲全曲演奏会at日比谷公会堂」。 日本人指揮者唯一の偉業となる一大プロジェクトをぜひお聴き下さい。

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降福からの道 欲張り指揮者のエッセイ集
「僕の人生、音楽だけではないが、正面から指揮をやってきたらこれほどの発見があったことに驚いている!」

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ショスタコーヴィチ:交響曲 第7番 「レニングラード」

大阪フィルハーモニー交響楽団

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大阪フィルハーモニー交響楽団